紅茶と文学が始まるまで#2 「罪と罰」編

紅茶と文学が始まるまで1、の続編となります。

■「ドストエフスキー未読コンプレックス」とは

これはそのまま意味合いで、「海外文学における「文豪」そのものの存在と言っても過言ではない「ドストエフスキー」の著作(5大長編)を読んだ経験の無い人間が抱える引け目の事」を指します。

本が好き、小説が好きと言って読書会に来ていながら、ドストエフスキーを読んでいないので、カラマーゾフや罪と罰の話題が出ると急に無口にならざるを得ません。
これは海外文学や近代文学に興味がない人はあまり関係が無く、むしろ中途半端にその辺りを攻め始めた読書家が陥る症状だと言っていいでしょう。

読書会に行き始めてから近代文学シフトをした私はまさにドンピシャな状況な訳です。

「読みたい」と「読まなければいけない」この2つの思いを抱えながらも、うかつには手を出せないロシアの重鎮。そしてその5大長編。

このモヤモヤとした思いを打ち破る唯一の解決策、そうそれは「読む事」に他なりません。

そして選択した本は「罪と罰」

岩波書店から出ている「罪と罰」は上中下3巻で計1200ページ以上、読み始めた者の70%(推定)がロシア人の難解な名前に苦しみ挫折するという、言わずと知れた超大作。

「罪と罰を読まない」と言う本まで出版されるほど、挫折本ランキング一位の座を掴んで離さない作品なのです。

日々仕事に追われ時間も無く、ついついノウハウ本などに走りがちな社会人がこの小説を読み切るにはどうしたらいいのか?

実はその答えはしばらく前から分かってはいたんですよね。

自ら読書会を主催し、この「罪と罰」を課題本に選べば良いのです。
そして同じ思いを抱える人を巻き込み、逃げられない場所へ自らを追いやる訳です。まさか主催者が読みきれない、と言うことなど有っていいはずが無いですから。

そう考えて2017年末に「3ヶ月後の2018年3月、罪と罰の課題型読書会を行う!」と周囲に宣言。

その宣言以前から工作活動を行っていたおかげもあり、何と初開催、そして罪と罰が課題本にも関わらず述べ12人もの方から参加申込みがありました。

しかし私は思っていました。果たしてこの中で何人が最後まで読みきれるのだろうか、と。

日本現代小説やビジネス本、エッセイ等で「読むのが苦しい」と感じる事はあまり無いですよね。ところがこの罪と罰、読むのが苦しいのです。

若者が老婆を殺して苦悩する~と言うあらすじが有名な本作、主人公はラスコリーニコフとロジオン・ロマーヌイチとローシャです。3人いるんだね~、と思ったあなた、そうでは無いのです、これは同一人物なのです。主人公との関係性によって彼に対する呼び名が違うのですよ。

これがメインキャラのみならずサブキャラまでにも浸透していて、更には当時のロシアの時代背景、ロシア語の意味、キリスト教、翻訳もの特有の読みにくさ等も絡んできます。

作品も長いので読書を一旦中断してしまうと、再開しても思い出すことがほぼ不可能で、訳が分からなくなり皆この本を窓から投げ捨てたくなるのでしょう。

上巻を読み始めたのが12月下旬。しかしこの上巻、どう頑張っても平日は1日2,30ページしか進まず、休日にまとめて読もうと思ってもそう簡単には行きません。100ページ進めば御の字と言うところ。しかも意外に早く老婆が殺されるのでその後の長さに戦線恐々とする訳です。

しかしながらこの本を読み終えると言う決心と義務があるので、へこたれるわけには行きません。

主人公の構ってちゃんぶりに心底の疲労を覚えながらも、物語自体はエンタメ的に楽しめる部分もあり(中巻に入ってから面白くなる&刑事サスペンス要素も有)、上巻、中巻をクリアし下巻を読み終たのは2月下旬でした。およそ2ヶ月を1つの作品に費やしたことになります。

そして読破後にこう思いました。

「本当に読んでよかった」と。

今までの苦労が報われた、エピローグを読んだらそんな気持ちになりました。

確かにこの読書自体は楽しいよりも辛い方が勝っていたのですが、最後にこの作品を読み切った者だけに訪れる「ご褒美」のようなものがあると感じましたね。
あの自然と胸に湧き上がったカタルシスは今でも忘れません。

今までに読んでよかった本は何ですか?と聞かれたら迷いなく

「罪と罰です」と答えるでしょう。

■読書会はどうなったか

レポート(内容に触れていますので未読の方はご注意)は紅茶と文学のサイトにあるので、ご興味有る方はご覧いただければと思います。
https://tea-books.com/history/h1/

しかし我ながらよくここまで頑張って書いたなぁ、罪と罰へのモチベーションはすごかった。

そうそう、罪と罰を読むための読書会開催だったので、当然参加者は本を読了して来るはずなのですが、開催日までに読了断念の連絡が相次ぎ、

最終参加者は6名、読破者は5名

と言う結果になりました。初回ながら現在までの最高キャンセル数記録となります。

2週前にエントリーした方もいたのですが、多分物理的に読めないだろうなぁと思っていたらやはりその様な結果となりました。最低1ヶ月は必要ですね。

そして気づきました。

読書会を行っても話が全然まとまらない事に。

1200ページも有る話なので記憶している箇所がそれぞれ違っていたりで、ややとっちらかってしまいました。上中下、それぞれが終わってからやっても良かったかも知れません。

しかしこの読書会の意義は参加する事と言うより読了する事にあったので、皆さんドストエフスキーコンプレックスから開放され、そしてこの上ない達成感も得られて、めでたしめでたしと言う結果になりました。

と言う事で読書会が始まるまで、について書いてきましたが、
ブログ始めてからいきなり長く書いてしまいましたね、もう少しスムーズに行かないと持たないな。

次からはもう少し軽い内容で色々書いていこうと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

2件のコメント

  1. 感動しました。
    惹きつける文章で、とても楽しく拝読しました。前回のブログ内容も合わせて、共感することばかりです。

    読書会は自分の凝り固まった読書観を更新するのに最適です。何度か参加させていただきましたが、世界が広がりました。Satohさんのおかげであります。
    ということで、私も読むかな罪と罰。。

    1. ワタナベさん

      コメントありがとうございます!
      いやーこの様な感想を頂けるとブログを書いて良かったなと思います。
      またぜひ読書会ご参加ください。

      罪と罰、もちろんおすすめですが、人生の一部を費やす必要があるので笑
      色々な翻訳が出ていますが、光文社新訳版は避けた方がいいかなぁと個人的には思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です