紅茶と文学が始まるまで#1

「紅茶と文学」という名前で読書会と棚本屋を運営しているのですが、かれこれ20数回、3年以上続いている活動となります。

まず何を書けば良いのか・・と迷ったのですがほぼ一発目と言う事なので、
読書会が始まった経緯について書こうと思います。
ちょっと、いやかなり長いのですがご一読頂けると幸いです。

■読書会を始めた理由

読書会を始めた理由は「読書会に参加するうちに自分でもやってみよう思った」と言う単純な動機からです。読書会を始める人って殆どこのパターンなのではないかと思います。

読書会に行き始める前はその存在すら知りませんでした。
4,5年前くらいにたまたま読書会を取り上げた新聞記事を読んで「こんな楽しそうなイベントが有るのか!」とテンションが上がった記憶があります。
読んだ本や観た映画について語りたい、と言う気持ちって誰しもが持っているものでしょうし、ましてやオタク気質を持っている人は余計にその傾向が強いですよね。

私は元々は音楽オタクだったのですが、30を過ぎてから現在進行系の音楽に興味が持てなくなっていて、自然と興味対象が別のものに移る時期でもありました。
また年齢を重ねていくうちに「あれ、このままだと交友関係がどんどん狭まって行くんじゃね・・?」と言う危機感に近い思いもありました。

大体20代後半くらいから周りが結婚したり子供が出来たりしますよね。
ライフスタイルが変わることで、なんとなく今までの友人関係に変化が生じ、お互いに気を使って疎遠になっていく、と言うのはかなり一般的な事象だと思います。
フェスに行く、友達のライブに行く、ちょっと飲みに行く、とかその辺りも含めて徐々に機会が少なくなっていき、うーんこれはちょっと自分から外に出ていく必要があるぞ、と思い始めた時期でもありました。

さてそんなこんなで、最初に参加した読書会は「交換読書会」。

この読書会は各自がおすすめの本を持ち寄り、紹介した後にランダムに交換する、と言うシステムを採用しており、当時は募集枠が毎回瞬殺する人気ぶりでした。主催はM氏と言う得たいの知れない人物。

ここに初めて参加した時に紹介した本が、角田光代さんの「かなたの仔」と言う小説です。

本を誰かに渡す、と言う決まりなので本当にお気に入りの本は持っていくことは出来ない、でも良いと思う本は持っていきたい、そんなジレンマを参加者に課す会でもありました。

紹介型の読書会なので、当然のことながら持ち寄った本を各自紹介するのですが、

本を紹介する=本のプレゼンなんですよね。

ぼんやりとしか本の内容について覚えていなかったので、いざ紹介するとなると全然上手く喋れないんですよ。しかもネタバレをしない程度に面白く紹介するのは難しい。
今までそんな事をした事がなかったのでかなり不完全燃焼で紹介を終えました。
そして皆さんの話を聞いていて痛感したのが「あ、自分全然本を読んでなかった・・・」と言う事実です。

学生の頃は小説を多く読んでいて、大学や市の図書館で借りまくっていたのですが、どちらかと言うと読みやすい、エンタメ寄りのものばかりでした(村上春樹だけは結構読んでいた)。
しかしその読書会で他の人が持ってくる本は専門書や、小説であれば国内外の近代文学も多く、自然と会話に出てくる作家も文豪と言われる人達ばかり。せいぜい夏目漱石と三島由紀夫を一冊読んでいた程度の自分が話に付いていける訳も有りません。

割と語れるだろう、と思って参加したのに、全然ダメでむしろ情けない気持ちを抱いた事を思い出します。「現代エンタメばかり読んでいては小説を語れない」と素直に感じたので、この初回をきっかけに、近代文学、文豪方面へと自分の方向性がシフトされました。

もちろんこの辺りの考えは人それぞれで、現代文学しか読まない人がいても全然いいし、個人の自由です。しかし何かを語る、それも高いレベルで語りたいのであれば「良いもの」を知っている必要があるかなぁと思います(誤解の無いよう言っておきますが、角田光代さんは今でも好きだし、優れた作家だと思っています)。

何度か交換読書会に行くうちに、他の読書会はどういう雰囲気なんだろう?と思い、
「読み人交差点」と言う読書会にも並行して参加をするようになりました。こちらは毎回3、40名ほど集まる大規模な紹介型読書会でした。

ここで出会ったのが現在も某読書回を主催しているU氏と言う男性。初対面の時に言われた言葉は今でも忘れませんが、その話はまた別で書こうと思います。

こうして読書会に行くようになり、知り合いも増えていく中で、自分でも何かやりたいな、と思い至る様になりました。受動では無く能動的に動きたいという事ですかね。

自分で人を集めてイベントを主催する、と言う経験もしたいし、それを好きな文学であったり音楽、映画を絡めたものに出来れば面白いのではないか。

丁度そう思い始めた時期に交換読書会主催のM氏が「こんないい場所あるよ~」とナイスな立地の会場を紹介してくれたのです。キッチン付属の30人は楽に入れる広い会場で、しかもお金もあまりかからなさそう、という最高な場所でした。

そこでまず読書会を始めた・・・訳ではなく当初は名(迷)曲喫茶とかボードゲーム会とか、読書とあまり関係ない事をやっていたのです。どちらかと言うと人を集める、ということに主眼を置いていたんですよね。オーガナイザーとか呼ばれたかったのかもしれません。

名曲喫茶は音楽を聞け!喋るな!というルールを課した結果、人が全く来なくなりそうな気配だったので早々に休止をし、皆が楽しめるイベントにしなきゃ!と慌てふためきボードゲーム会へと移行した経緯もあります。
実際ボードゲーム会は毎回20名以上の方が来てくれたおかげで、ある程度当初の目的は達成され、この次は何をやろうか・・・と考えた結果、課題型の読書会に移行することにしたのです。

そこにはある一つの壮大な目的がありました。

それはドストエフスキー未読コンプレックス」を打ち破るという事。

「文豪シフト」を決行してからこの方、ラスボスと恐れ続けていた「罪と罰」に挑戦する事となったのです。

つづく

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